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働き方改革の注意点(時間外労働・休日労働と36協定)

 

時間外労働の上限規制は、働き方改革で最大の改正点となっており、事業主にとっても最も頭が痛い内容になっています。

どうしてこの人手不足のときに、時間外労働を規制するの? これでは日本としての生産力が低下するじゃないか、と言いたい方も多いと思います。

しかし、この時間外労働の規制は、むしろ日本の生産力を高めるための施策なのです。

これまで日本の労働環境は、30~40代の男性が中心に担ってきた、と言えるでしょう。そしてこの年代に過剰な長時間労働を強いてきたため、女性や高齢者などはそのサポートに回らざるを得ず、結果的に働くことができない環境にあったのです。

そこで今回の改革によって、その歪みを修正し、皆がワークライフバランスを向上させることで、すべての人が効率よく労働に参加し、結果として日本全体の生産力を増大させることが狙いなのです。

 

時間外労働の上限規制の導入

 

労働基準法の70年ぶりの大改革と言われているのは、この点です。これまでも限度時間という表現で守ってほしい上限時間を示してはいましたが、ここに罰則はなく、実質的な効力はありませんでした。
また、臨時的な事情に基づく「特別条項」には、限度時間がありませんでした。
つまり、届出さえすれば、労働時間に上限はなかったのです。

 

さて、今回の改正で義務付けられる労働時間の上限は、もともとあった限度時間のうちの1月と1年の時間数をそのまま使用し、

月45時間、年360時間

となりました。

 

この場合の時間外労働には、 休日労働は含まれません。休日労働とは、 週1回の「法定休日」に労働した場合をいいます。日曜日に仕事をした場合、と考えてください。

時間外労働45時間で、それに加えて休日労働があったとしても、上限規制以内なのでOKとなります。

 

ただし、ここで注意してほしいのは、45時間に含まないのは「法定休日」に働いた 「休日労働」だけです。

(休日労働の考え方については、>時間外労働・休日労働と36協定を確認ください)

土曜日か日曜日に出勤したとして、それが休日労働に該当するのは、 法定休日を就業規則で定めている場合か、 土日ともに出勤した場合と考えるべきです。

 

特別条項

 

上記の上限規制を原則としますが、その上限を超えて仕事をしなくてはいけない場合=「臨時的な特別な事情がある場合」には「特別条項」の届出を提出する必要があります。

これによって、 月100時間未満、年720時間以内の時間外労働・休日労働をさせることができますが、1年間に使える回数は6回までです。12か月のうち、限度時間を超えられるのは6か月だけ、ということになります。

なお、年6回までの制限は、事業場単位ではなく 個人単位ですので、1人でも超えた月が6回までという意味ではなく、それぞれの従業員につき6回までという意味になります。

 

また、少し複雑ですが、1月あたり100時間未満、とされているのですが、 複数月平均では80時間までという規制もあります。複数月平均は直近2~6か月の平均になり、この間、平均して80時間を超えてはいけないということになります。
(直近2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のいずれも平均して80時間を超えてはいけません)

 

なお、この特別条項の 「100時間」「80時間」には、休日労働も含まれますので注意しましょう。

(「720時間」は時間外労働のみで、休日労働を含みません)

 

適用が猶予または除外されている事業・業務

 

下記の事業・業務に関しては、来年から上限規制を適用することが困難であると判断され、一定期間の猶予または除外がされています。

①自動車運転の業務
2024年4月から、時間外労働上限960時間以内の規制がされる見込み。
②建設事業
2024年4月から適用される見込み。
ただし、災害復旧事業については適用しない。
③医師
2024年4月から適用される見込み。
ただし、上限時間については、未定(一部報道では、960時間で調整中のようです)。
この猶予対象になるのは 医師のみで、看護師などその他の医療従事者は通常どおりの上限規制対象になります。
④鹿児島県・沖縄県における砂糖製造業
2024年4月から適用される見込み。
⑤新技術・新商品等の研究開発業務
上限規制の適用除外。ただし、医師の面接指導などの健康確保措置をとる必要があります。

 

※適用除外、猶予の業種でも、通常どおりの上限規制で36協定を締結することが望ましい、とされています。

 

36協定届の様式変更

 

まず、下記に新しい様式(記載例)を載せておきます。

新36協定記載例

新36協定特別条項記載例

 

ついでに現行様式(旧)も掲載します。

現36協定記載例

現36協定特別条項記載例

 

※各記入例は、厚生労働省から提供されているものです。

 

最も大きく変更になった点は、「特別条項」用の様式が2枚セットのものになった、ということです。

限度時間を超える見込みがある場合には、特別条項用の様式で届出をしてください。特別条項用は2枚が1セットになっています。2枚目に、臨時的に限度時間を超えて労働させる場合について記載します。

そしてこの2枚目には、「限度時間を超えて労働させる場合における手続」を書く欄があり、事前に代表者に申し入れするなどの手段を書かなくてはなりません。特別条項を出していても、勝手に限度時間を超えることはできず、1か月ごとに労働者に対する申し入れが必要です。

また、限度時間を超える場合の健康福祉確保措置を記載する欄もあります。裏面か①~⑩の中から取るべく措置を選択し、書く必要があります。限度時間を超えるということは、それだけ重大なことだということを認識させられます。この健康福祉確保措置の実施状況の記録は3年間の保存が義務付けられています。

 

その他の変更点は、

・以前は「所定労働時間」を書くことになっていましたが、本来大事なのは「法定労働時間」を超える部分が時間外労働になるので、所定労働時間は参考程度に(任意)となり、 法定労働時間を超える時間を書くようになりました。

・1か月について100時間未満で、かつ2か月から6か月平均80時間を超えないこと、というような欄が下のほうに追加され、チェックを入れることになっています。

 

適用時期

 

この規制の適用開始は、大企業は2019年4月から、中小企業(300人以下、卸売業・サービス業は100人以下、小売業は50人以下)は、2020年4月からということになります。

 

どうせ4月から始まるなら、4月より前に出す予定のものも新様式にしてしまいたい、という会社がある場合、新様式での届出も可能となっています。その場合、旧様式には記載の必要のない箇所は、記載する必要がありません(チェックボックスへのチェックなど)。

ただし、 2019年3月31日以前に提出する36協定届は 1年間有効で、それまで新様式での届出にする必要がありませんので、安心してください。

※3年間の有効期間を設けた36協定も1年間に限り有効となります。

 

36協定の有効期間途中の変更について、これまでは特に制限がなかったため可能でありましたが、新様式の場合は上限規制が厳格に適用されるため、起算日の変更となる 期間途中の変更は原則できません(基発1228第15号)。理由があってやむを得ず変更する場合でも、変更によって1か月や1年間の上限規制がリセットされることはありませんので、ご注意ください(この点は旧様式の場合も同じ)。

 

その他の注意事項

 

3か月を超える「1年単位の変更労働時間制」により労働させる場合の限度時間は、

月42時間、年320時間

になります。

 

1か月未満の有期労働者については、目安時間として、

1週間 15時間
2週間 27時間
4週間 43時間

を超えないようにする努力義務が課されます。

 

1日、1か月、1年での延長時間の定めに加えて、それ以外の期間の延長時間の定めをすることもできますが、定めをした場合には法律の拘束力が生まれます(基発1228第15号)。

 

罰則

 

6か月以下の懲役または30万円以下の罰金になります。

1事業所あたり30万円以下になる可能性が高いですが、違反した労働者1人あたりになることもありえますので、ご注意ください。

 

 

4 comments

  1. ピンバック: 働き方改革とは? 簡単に説明します。

  2. ピンバック: 時間外労働・休日労働と36協定

  3. ピンバック: 労働時間とは

  4. ピンバック: 法定休日、振替休日と代休

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