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賃金規程(賃金表)を作りましょう1

 

賃金規程とは

 

賃金の原則

 

賃金には、2つの側面があると言われています。すなわち、「生活保障の原則」「労働対価の原則」です。ごく当たり前のことですが、賃金表を作成する場合には、ちゃんと考慮しなくてはならない大原則です。

生活保障の原則とは、労働者は生活のために働いている場合がほとんどですから、賃金は労働者が生活していくだけの金額がなければ、成り立たないということです。

労働対価の原則とは、賃金は働いた分に見合う金額が支給されるべきである、ということです。ただし、仕事の困難さ、労働者の技量、生産性などから単価が異なるのは当然のことと言えます。

 

賃金規程を作成することの意義

 

労働者を雇用する際に、賃金表のない会社では「前に雇用した人はこれくらいだったから」という理由で給料を決めることが多いと思います。それも、そのときどきの会社の業績や全体の景気、人手の過不足によって恣意的に上下されることがあります。

1回や2回なら、それでも問題ないかもしれません。しかし、それがずっと続いていくと、後で全体を見たらバランスが悪くて収集がつかない、ということに陥ります。

賃金規程(賃金表)は、全体のバランスを事前に見て決定しておきますので、新規学卒者の採用はもとより、中途採用者に対しても賃金の決定に迷いが出ず、 公平に賃金を決めることができます。いちいち、「いくらにしようかな」と頭を悩ませる必要がないのです。

さらに、賃金表を労働者に公開しておけば、社員も自分の賃金に納得がいくし、将来どれくらいもらうことができるかもわかるので安心して働くことができます。また、どう努力すれば賃金が上がるかも明確なので、 モチベーションの向上にもつながります。

 

賃金規程は就業規則の一部

 

就業規則を作成すると、「賃金」に関する項目が必須になります。これは、「賃金規程」として別冊にする場合もあります。それだけ賃金に関する内容はボリュームがあり、重要であることがわかります。

なお、賃金の決定には人事制度も非常に関連性が強いため、「人事考課規定」も作成しておくといいでしょう。

就業規則は常時10名以上の労働者を雇用したら作成・届出の義務がありますので、10名以上の会社になったら賃金表も作らないければならないと言えますが、就業規則も賃金表も 10名未満であっても作ることができますし、ルールがわかりやすくなるので 作成しておくことを推奨します。

>>就業規則とはを参考にしてください。

 

賃金水準の決定

 

では、会社全体の賃金の水準はどのようにして決めるべきでしょうか。これについては、いくつかの方向から見ていく必要があります。

 

①最低賃金

 

最低賃金法によって、賃金の下限が決められていますので、これ以下にすることはもとよりできません。これは上で説明した「生活保障の原則」に則ったものです。

 

②労働の対価

 

次に、「労働対価の原則」が考慮されます。「こういう仕事はだいたいこれくらいの単価で」という社会通念のようなものが存在しますので、それに従ってベースを決定します。

 

③市場価格との関係

 

しかし、労働力にも市場価格というものがあります。上記のように給料を決定したとしても、人が確保できないのであれば、応募がある水準まで引き上げることを検討しなくてはなりません。まして、優秀な人材を雇いたいと考えた場合にはなおさらです。

そのためには、 労働力の市場価格をきちんと調査する必要があります。

 

④支払可能な額

 

最後に、上記の金額と 会社として払える額を比較しなくてはなりません。「たくさん払ってあげたいけど、自社の支払能力からするとこれが限界だよ」というラインがあります。

「払える額」というのは、その事業でどれくらいの収益が毎年あげられる見込みか、ということです。ですので、ここでは 会社の収益体質をしっかりと把握しておかなければなりません。

ただし、会社としてはこれくらいしか払えないから給料は低水準にする、と安易に決めることはできません。なぜなら、人が集まらなければ会社は成立しないからです。働く人がいなければ、売上をあげることすらできません。応募してくれる水準に給料を引き上げるために、 収益構造を見直す必要があるかもしれません。

 

昇給のシステム

 

定昇とベア

 

定昇とは「定期昇給」のことです。

賃金表の作成には、「昇給」の要素が欠かせません。誰でもすぐにできる単純作業や高齢者ばかりを採用しているのでなければ、技術の習得に合わせて昇給させることが普通です。

定期昇給とは、賃金表で定めた割合に従って、昇給させることです。年齢と勤続年数が増えたこと、技能の向上が評価されたことなどで、賃金表の中でランクが1つや2つ上がって、昇給するというシステムです。

多くの会社では、年に1回の昇給があります。それくらいの期間で昇給がないと、社員のモチベーションが保てないのではないでしょうか。

 

ベアとは「ベースアップ」のことです。

ベースアップは、いわば 「賃金表の書き換え」です。賃金表を「ベース」とすると、そのベース自体に上乗せされるということになります。物価や労働力の市場価格の上昇に合わせて、会社全体の給与水準を増加させるシステムです。

ベースアップすることで、定期昇給がある人もない人もまとめて昇給することになります。もちろん、定期昇給の対象者は2重に昇給するということになります。

毎年、大企業から始まる「ベア交渉」の結果で、中小企業のベア水準も決定されることが多いです。社会全体のベースアップや最低賃金の上昇に合わせて給料を増やさなければ、人が定着しないという事態になる可能性があります。小さな会社では「関係ない」と思っているところが多いと思いますが、 「定期昇給」のかたちでベアを考慮した昇給をしているのではないかと思います。ただし、本来は、定昇とベアを区別しておかないと、将来の会社の形を描くことができなくなるでしょう。

 

賃金カーブ(昇給基準線)

 

新規学卒者が勤続に従って、標準的に期待される昇進をした場合の基本給の推移を示したものを「賃金カーブ(昇給基準線)」)と言います。

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賃金カーブには、上のようなパターンがありますが、日本では「放物線型」や「S字型」のように、ピークを過ぎると昇給はストップし、あとは役職手当の増加で給料が増加するパターンが多くなっています。

賃金表を作成するには、 どのような賃金カーブを描くことを理想とするのか、検討しておくことが必要となります。

 

賃金の種類

 

属人級と仕事給

基本給の決め方は、下記のように分類できます。

①属人給
属人給とは、「人」の要素に応じた給料の決め方です。たとえば、 年齢、勤続年数、学歴などによって基準を決めておくやり方です。

②仕事給
仕事給とは、「仕事」に着目した給料の決め方です。
職務給」は、職務の難易度や重要性により決定されるものです。 単一職務給(シングルレート)は同じ職務にはまったく同じ賃金を適用するもので、 範囲職務給(レンジレート)はベースは同じ賃金でも能力差に応じて差異をつけるものです。
職能給は」、従業員の能力に応じて決定されるものです。

③総合決定給
総合決定給は、上記のものを総合的に使用して決定するもので、正社員であれば、 年齢給+職能給というパターンが主流です。アルバイトなどの場合は職務給を採用することがありますが、この場合でも範囲職務給とするのが通常のようです。

 

定額制と出来高払制

 

定額制は、労働日数や労働時間に応じて賃金が決められている場合で、月給制、週給制、日給制、時給制などがあり、年俸制もこれに含まれます。

これに対して、仕事の成果に対して支払われる賃金を出来高払制と言います。ただし、出来高払制をとっていても、労働させている場合には、一定の賃金の支払義務がありますので、完全に出来高のみということは不可能で、最低報酬+出来高払制というパターンになります。

 

>>賃金規程(賃金表)を作りましょう2に続きます。