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賃金規程(賃金表)を作りましょう2

>>賃金規程(賃金表)を作りましょう1で、「賃金」についての理解ができたと思います。続いて実際の賃金表の作成について説明します。

 

賃金表を作る準備をする

 

まずは自社の現状把握から

 

何事も、最初に行うのは現状分析ということになります。自社の現状をしっかり把握できなくては、何を決めることもできません。自社の現状は世間と比べてズレがないか、想定している通りになっているかを確認します。

まず作成するのは、下記のものを集めた一覧表です。(できれば社員全員分)。

  • 年齢
  • 勤続年数
  • 性別
  • 給料(基本給、手当、賞与、残業代)
  • 職種(部門)
  • 役職
  • 過去の昇給の推移

次に、これらをグラフにプロットしましょう。横軸に年齢、縦軸に基本給を取ります。また、プロットする点の形で性別を区分しましょう。

これによって、自社の賃金の分布図が出来上がります。分布図ができると、会社全体のバランスがわかります。年齢による賃金の上昇率が一定でない、女子の賃金が低い、年齢分布が途中で途切れているなどは望ましい形ではありません。

このバランスでいいのか悪いのか、確認したうえで賃金表を作っていかなくてはならないので、これは非常に重要な作業になります。。

 

続いて、現在の「自社における標準的な賃金モデル」を抽出します。標準的な賃金モデルは、理想としては、新規学卒者として入社し、自社の平均的な能力を発揮して年齢に応じた役職に就いた者が望ましいですが、サンプルが少ない場合には難しいかもしれません。

その場合には、全体の分布図を参考にしながら、実在の者の中から最も標準に近い人物を選び出すか、標準に近い数名の人物の平均を取る、などの手法を取ります。

標準的な賃金モデルも横軸に年齢、縦軸に基本給を取ったグラフを作成します。これによって、自社の現在の標準的な賃金カーブを知ることができます。

 

世間の相場を知る

 

次にすべきことは、同業種・同規模の会社では、どれくらいの賃金カーブになっているかを確認することです。特殊な業界ではサンプルが少なく、同業種・同規模の会社の平均値を知ることは難しいですが、近い業種や規模の会社のデータを取得し、補正を加えることで比較対象とします。

また、同業種・同規模の会社でも、賃金には地域差がありますので、最低賃金などの全国データによって補正を加えることで参考値とすることができます。

他社の賃金データは、賃金構造基本統計調査やハローワークで発表しているデータ、公益団体や民間の発表している統計データで確認しますが、一つのデータを信用することが避けたほうがいいでしょう。信頼できる複数のデータに補正を加えて、他社データとすべきです。

ここで、自社の標準モデルと比べて、どうなっているかを分析します。そうすれば、自社の賃金水準は高いのか低いのか、これからどうしていくべきかが見えてくるはずです。

 

賃金表の骨格を作る

 

人事制度を作る

 

ここまでで自社の将来の賃金水準のイメージができてきたかと思います。次に、職種や役職、能力の分類をします。

 

職種によって賃金水準に差をつけたい場合には、職種の分類が必要です。技術・営業・事務・現業などに分類し、それぞれの標準的な賃金を検討します。キャリアディベロップメントプログラムなどを採用し、さまざまな部門に異動する可能性がある場合には、部門によってのみ差をつけると整合性が取れなくなるので注意が必要です。

役職によって手当をつける場合には、必要と思われる役職を設けます。部長・課長・係長・班長など、一貫性のある役職ラインを考えましょう。「工場長」や「主任」など、部署によって特徴的な役職を設ける場合でも、「どの役職と同じレベルなのか」を意識して整合性が取れるようにしなくてはなりません。

能力評価は最も難しい作業です。直属の上司など、評価する者によってバラつきが出ないように評価手法を検討しましょう。恣意的な評価があれば、社員の中で不満が大きくなってしまいます。基本的には「貢献度」によって決めることになりますが、より明瞭にするために、操作できる装置、保有する資格、作業スピード、担当する顧客数など、考えられる具体的な指標を一度、ブレーンストーミング的に書き出し、適切な指標を選定するといいでしょう。ただし、最終的な評価は、やはり直接の評価者と相談して決定すべきです。

 

賃金体系を決定する

 

はるか昔の時代とは違い、今は年功序列による賃金制度は成り立ちません。かと言って、完全能力主義にするのも難しいのが現実です。

基本的には、年齢給+職能給とするのが普通です。年齢が上がれば子供もでき、生活費が増すのが通例です。生活を保障する意味でも、全体としてのバランスを取る意味でも、年齢給は必要です。

長く会社に勤めるほど基本給が増える「勤続給」は採用すべきではないと考えます。現代のように労働力の流動化が進んだ時代においては、中途採用は非常に多くなっているし、即戦力を採用したい場合に有効な手段です。勤続給はそのような中途採用を阻害するものになってしまうため、年齢給のみをベースとするほうが望ましいです。

職能給の一部として、役職手当があります。課長以上は残業手当が支給されないため、役職手当がその代わりになることを頭に入れて、額を決定しなくてはなりません。そのために、自社の社員の残業時間を確認しておく必要があるのです。

 

賃金表を作成する

 

年齢給を策定する

 

賃金カーブは、役職手当を除けば、S字型になるのが一般的です。つまり、入社後しばらくは緩やかに伸び、一定の経験を積んだ後は昇給幅が大きくなりますが、ある年齢でピークを迎え、そこからは賃金が下がっていくことになります。

そこで、年齢給を決める場合に、ピークを何歳にもってくるかを決める必要があります。これについては、業種や職種により差がありますので、一概に決めることはできません。会社の業務内容に照らして検討してください。

次に、S字カーブに合わせて、昇給幅を決めます。昇給幅についても、会社によりさまざまですが、社員が将来に不安を感じるような小さな昇給幅にならないように決定すべきです。入社時には他社より高い給料を得られるが、ピーク時の給料ははるかに安いということになれば、社員の定着率に悪い影響を及ぼすのは言うまでもありません。

現在は若い社員ばかりという会社は、注意が必要です。10年後、20年後に総賃金額がどれくらいになる見込みかを考えて人材の採用や収益構造の見直しをする必要があります。

 

職能給を策定する

 

職能給は、能力による評価制度+昇給幅によって決定されます。評価制度は人事制度の決定の際に定めたものを使用しますが、最終的にチェックして、そぐわない場合には修正が必要になります。

昇給幅は、理想とする賃金カーブ、年齢給を参考にして決定することになります。年齢給と合わせて標準的な能力の社員が理想とする賃金カーブを描くようにします。

職能給の目的は、モチベーションの向上ですので、その効果が最大限に発揮されるように検討が必要です。あまりに低い目標は意味をなさなくなりますし、あまりに高い目標は達成意欲を失います。最高評価の社員と最低評価の社員の差をどれだけにするかも大きなポイントとなります。