平成30年12月8日、「改正入管難民法」が成立しました。
これは、日本の労働力不足のために、外国人を活用する機会を広げるための法律です。
ここでは、改正入管難民法による外国人材受け入れ拡大について、簡単に説明します。
外国人労働者の現状
金沢で住んでいて感じるのは、外国人観光客の増加です。金沢駅は連日、外国人でいっぱい。一昔前とは大きく変わったと感じられます。しかし、外国人労働者の数は、少しずつ増えてきているかなあ、という程度です。
ところが、東京や大阪、名古屋などへ出張や旅行で訪れると、ホテル・コンビニ・飲食店のほとんどは外国人を雇用していることがわかります。特に都会では、それだけ労働者が不足しているのです。
入国者数
法務省の発表では、 平成30年の外国人入国者数が約3,010万人になったということです。昨年は約2,743万人で、1割程度増加したようです。
8年前の 平成22年が944万人だったので、入国者が激増していることがわかります。
上位は、韓国・中国・台湾・香港・アメリカとなっており、東アジアが圧倒的に多いです。
外国人労働者数
厚生労働省の発表では、平成30年10月時点の外国人労働者が 146万人超(前年より14.2%増)となったようです。平成20年には49万人だったので、 10年で約3倍に増えていることになります。
国別では、中国人が26.6%、ベトナム人が21.7%、フィリピン人が11.2%となっており、ベトナム人がかなり増えています。
改正入管難民法(在留資格の拡大)
今回の外国人材受け入れの具体的な内容は、日本で働くことができる業種が増える、ということです。
この点は、行政書士の分野になりますが、外国人が日本に滞在するには許可が必要です。観光や商用など90日間以内の場合を除いて、留学や仕事などで90日以上滞在する場合は、「在留資格」が必要となっています。
現状の入管難民法の在留資格
在留資格は明確に定められており、 これに該当しない場合は、許可されることがありません。許可を受けた資格の内容以外の仕事をすることも基本的には認められません。
「活動系」の資格として、下記のものがあります(これ以外に「身分系」と呼ばれる資格があります)。
- 外交
- 公用
- 教授
- 芸術
- 宗教
- 報道
- 高度専門職
- 経営・管理
- 法律・会計業務
- 医療
- 研究
- 教育
- 技術・人文知識・国際業務
- 企業内転勤
- 介護
- 興行
- 技能
- 技能実習(1~3号)
- 文化活動
- 短期滞在
- 留学
- 研修
- 家族滞在
- 特定活動
上記で「技能」とは 熟練した技能を使ってする仕事で、「技能実習」とは技能を習得するために 一定期間、日本で対象となる仕事をすることです。
これらにはいわゆる単純作業は含まれておらず、コンビニや飲食店の店員をするために在留するということはできませんでした。
では、現在、大都市のコンビニで働いている方たちはどういう資格を持っているのでしょうか?
これは、「留学」の資格で在留している外国人が主となっています。留学目的であっても、「 資格外活動」の許可を得れば、 アルバイトをすることができ、これらは単純作業でも構わないことになっているのです。ただし、本来の目的を損なわないように、週に28時間までで、風俗営業店では働くことができません。
ちなみに日本人配偶者など「身分系」の資格では、仕事に制限がありませんので、この資格を得るために偽装結婚などが行われることがあるのです。
特定技能1号・2号
これまで日本では、技能実習生を多く受け入れて人材不足を補うということを主として行ってきました。しかし、技能実習生は在留期限が短く(1年+2年で最大3年間)、上述のように単純作業には従事させることができません。
しかし、現実には、大都市のようにコンビニやホテル、飲食店への需要も非常に大きくなってきており、現実には留学の資格で在留しながら本来の目的は資格外活動(アルバイト)という外国人も多く存在するのです。
こういうギャップを解消するために、平成31年4月から「特定技能1号・2号」という新しい在留資格ができることになりました。
特定技能に含まれる業種は以下のとおりです。
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材産業
- 産業機械製造業
- 電機・電子情報関連産業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造
- 外食業
これらの業種では、今後5年間に145万人が不足すると見込まれているようで、これに対して5年間で最大34万人を受け入れることを検討しています。ある程度の人数を確保した場合には、受け入れ停止措置もあるようです。
特定技能1号は一定の技能が必要で、 在留期限が通算5年に限られ、 家族帯同ができません。
特定技能2号は熟練技能が必要で、期限を更新でき、家族帯同も可能となっています。ただし、 しばらくは受け入れる予定がなく、制度だけを作って準備していく段階のようです。
特定技能1号については 技能試験と 日本語試験の合格が必要ですが、この試験の開始は介護・宿泊・外食が2019年4月で、その他の業種はそれ以降となっています。
一部の技能実習生は試験なしで特定技能へ移行することもできるので、試験がまだない業種は技能実習生からの移行が主となりそうです。
外国人受け入れの課題と対策
日本語力
日本語の習得が高いハードルの一つであることは間違いありません。日本語ができないと仕事に支障を来すばかりか、生活することもままなりません。
まず日本語ができることが前提になりますので、特定技能資格のためには日本語試験に通ることが必要です。
日本語試験はベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイ、ミャンマー、カンボジアなどで開催予定です。職場で使う会話に重点を置いたものとなるようです。
報酬の搾取
これまで技能実習生は現金で給与をもらう場合が多く、搾取されやすい構造がありました。
今後の対策として、報酬支払は記録が明確に残る口座振り込みを推奨し、外国人が口座を作りやすくするように金融機関に政府から依頼があるようです。
また、不当に安い賃金を支払われることが社会問題となっており、差別的な取り扱いをしないことも決められる予定です。報酬額は日本人と同等以上が求められます。
不当に安い賃金しか払わない会社は、今後、外国人といえども雇用することができなくなっていくのではないでしょうか。人材不足の時代では、外国人にも選ばれる事業場でなければなりません。
悪質なブローカーの介在
来日の際に、「保証金」などといって多額の現金を取るブローカーがいます。もちろん日本なんかよりたくさんいます。
これらのブローカー対策も必要な項目として挙げられています。悪質ブローカー排除のために2国間協定の締結などが進められています。
東京への一極集中
外国人労働者が来ても、ほとんど東京に行ってしまうと全体としての効果が薄れてしまいます。
そのため、地方にも一元的相談窓口を設置する方針(約100か所)で、医療や被災に関しても情報を多言語化して安心して暮らせる体制を整えることになります。