4分の3基準
正社員として会社勤めしている場合は、普通は社会保険(厚生年金保険・健康保険)へ加入することになりますが、アルバイトやパートタイマーの短時間労働者はどうなるでしょうか。
実は、短時間労働者でも、「4分の3基準」を満たせば、社会保険へ加入ができます。
というよりも、事業主は加入させなければならないのです(その事業所が適用事業所である場合)。
【4分の3基準】
① 1週間の所定労働時間および 1か月の所定労働日数が
②同じ事業所で同様の業務に従事している 一般社員の
③ 4分の3以上である
特定適用事業所における取り扱い
それでは、4分の3基準を満たさない方々は社会保険へのが絶対できないかというと、そういうわけでもありません。
下記の5要件を満たす場合には、社会保険へ加入しなくてはなりません。
①週の所定労働時間が20時間以上あること。
②雇用期間が1年以上見込まれること。
③賃金の月額が88,000円以上であること。
④学生でないこと。
⑤ 常時501人以上の企業(特定適用事業所という)に勤めていること。
社会保険へ入りたい方にとっては、5番目の要件が一番高い壁になるのではないでしょうか。
任意特定適用事業所
500人以下の企業であっても、社長が、20時間以上働いているパート社員についても社会保険へ入れてあげたいと考えた場合、または労働者が社長と交渉してパート社員の社会保険加入を直訴した場合があったとしましょう。
その場合には、「 労使協定」を締結することによって、加入することができます。
これを「 任意特定適用事業所」といい、年金事務所に「申出書」を提出する必要があります。
ただし、労働者は上記の5要件のうち、1~4については同様に満たさなくてはなりません。
2016年4月以前の4分の3基準と経過措置
この4分の3基準の適用は、2016年の10月からになっています。
それ以前にも4分の3基準というものは存在したのですが、もう少し緩やかな基準でした。
その内容は、「1日または1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の おおむね4分の3以上」というもので、通達などではなく、「内簡」というもので定められていました。
この基準では、4分の3を満たしていなくても、常用的使用関係が認められれば被保険者とする、ということになっていました。
2016年10月以降、4分の3基準が明確になり、これを満たさない短時間労働者は社会保険の被保険者にはなれなくなったのですが、それまで加入していたのに急に社会保険から脱退しなさい、というわけにはいきませんので、2016年10月以前に社会保険に加入しており、そのまま継続して同じ雇用条件で仕事に就いている方は、 そのまま加入していて構いません、ということになっています。
ただし、2016年10月以降に同じ会社にお勤めのままでも、正社員から短時間労働者に雇用契約変更があって4分の3を満たさなくなった場合には、加入できませんので、ご注意ください。
育児休業明けの短時間勤務
最近では、育児休業明けの短時間勤務を就業規則で認めている会社が多いと思いますが、その場合に4分の3未満の労働時間となったときはどうでしょうか。
この場合は、雇用契約自体を変更せずに一定期間の短時間勤務を認めているだけなので、基準を満たさなくても、社会保険に加入したままで問題ありません。
短時間正社員
いわゆるパートタイマー等とは異なり、労働時間は短いけど正社員、という場合も、社会保険の被保険者となる、という通達があります。
具体的には、
①会社の就業規則等に短時間正社員に関する定めがあり、
②無期の雇用契約で、
③給料の算定方法などが正社員と変わらない
場合です。
今後の変更
ニュースによると、4分の3基準にかかる5番目の要件、つまり501人超の事業場という点について、引き下げが検討されているようです。中小企業からの反発もあるようですが、注目していきたいと思います。
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