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労働基準法とは。労働関係の基本法規

 

労働基準法は、昭和22年に制定された労働関係の基本法規です。

昭和20年に第2次世界大戦が終わり、翌年、日本国憲法が制定されました。日本国憲法には、基本的人権、民主主義、法の支配など、国民の人権と幸福を意識した思想が盛り込まれています。

戦前の日本の労働環境では、使用者優位で労働者が過酷な労働条件を課せられていたことがイメージできると思います。そんな中、日本国憲法に労働基本権が明記され、それをもとにした労働基準法ができたのです。

 

労働基準法は、使用者と労働者とが対等の立場で労働契約を結び、これまで弱者であった労働者の権利や自由を保障することが主の目的となっています。

 

基本規定

 

上記のような経緯から、労働基準法の第1条~第7条には、「労働契約とはかくあるべし」という基本理念が詰まった原則規定が書かれています。

 

労働条件の原則

 

第1条 労働条件は、労働者が 人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、 この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、 その向上を図るように努めなければならない。

 

第1項の定めをもとに、法定労働時間や法定休日、最低賃金などが決められています。

 

第2項では、それらの 基準はあくまで最低限のものであるので、使用者は労働者に それを上回る労働条件を提示するように努力しなさい、としています。

法定休日は週1日ですが、週休二日制をとっている企業が多いのは、この第2項を実行しているということになります。

しかも、これまで労働基準法を上回る待遇をしてきたのに、労働基準法に合わせて待遇を下げる、なんてことはしてはいけませんよ、となっているのです。ただし、「景気が悪くなって会社の経営が芳しくない」というときに待遇を下げるのは許容されています。

 

労働条件の決定

 

第2条 労働条件は、労働者と使用者が、 対等の立場において決定すべきものである。
2 労働者及び使用者は、 労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。

 

労働協約とは、使用者と労働組合が締結するもので、労働契約は使用者と個別の労働者が締結するものです。

ちなみに、守るべき順は、労働基準法>労働協約>就業規則>労働契約となっており、上位の基準を下回る規定は認められません。労働協約で決めた基準より低い待遇の労働契約は許されないということです。

上位の基準を上回るものは、もちろん問題ありません。労働基準法の基準を上回る待遇を就業規則で定めた場合は、それが優先されます。

 

均等待遇

 

第3条 使用者は、労働者の国籍信条又は社会的身分を理由として、 賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

 

信条とは宗教や政治理念のことです。社会的身分とは、生来の身分のことで、本籍によって差別してはいけない、としています。

ここでは「性別」が対象とされていません。性別に関しては、第4条で 賃金に関してのみ差別を禁じていますが、その他の労働条件については、 男女雇用機会均等法などの法律で改めて、差別が禁じられています。

 

「賃金、労働時間その他の労働条件」ということは、すべての労働条件を意味しているということはわかりますね。

ただし、これは「労働条件」であるので、労働する前の段階である「雇い入れ」は対象としていません。雇い入れに関しては、上記の点を考慮することは許されているのですが、実際には 面接時に本籍地を聞いたり宗教について確認したりしてはいけません、と指導されていますので注意してください。

 

罰則があります。違反の場合は、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」です。

 

男女同一賃金の原則

 

第4条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、 賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

 

ここで禁止されているのは「賃金」についてだけですが、上述のとおり、その他の労働条件については男女雇用機会均等法等などで差別を禁止されています。ちなみに、女性の賃金を男性よりも有利にすることも禁止です。

 

こちらの罰則も「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」です。懲役がつく場合もあります。けっこう重いですね。

 

強制労働の禁止

 

第5条 使用者は、 暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

 

今となっては、労働法違反というよりは刑法で処罰されるべき内容ですが、昔はこういうことが横行していたということです。

もちろん、労働基準法で最も重い罰則である「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰則」を受けます。

 

中間搾取の排除

 

第6条 何人も、 法律に基いて許される場合の外業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

 

基本的に誰かに労働させて、その給料を一部搾取するということが禁じられています。

ただし、「法律に基づいて」はいいので、有料職業紹介業は許可を受けていればいい、ということになります。

また、労働者派遣は「他人の就業に介入」に当たらず、対象外となっています。

 

罰則は、重めの「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。

 

公民権行使の保障

 

第7条 使用者は、労働者が労働時間中に 選挙権その他公民としての権利を行使し、又は 公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、 拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。

 

公民権行使とは、衆議院議員選挙で投票したり、町会議員として立候補したり、裁判員として招集されたり、民事訴訟なども含む裁判の証人と呼ばれたりすることです。

選挙で友達の立候補者の応援というのは、これには該当しません。また、非常勤消防団としての仕事も該当しません。

 

労働時間中に投票に行きたいと言われたら、使用者は拒めないのです。「今は忙しいから後にしてくれ」というのはいいですが、「仕事終わってから帰りに行きなさい」というのは認められません。「労働時間中に」行ってもいいことになっていますから。

ただし、その間、 別に有給にする必要はありません

 

これも罰則があります。「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」です。

 

労働基準法の適用の範囲

 

労働基準法とは、使用者と労働者の労働関係を対等にするための法律です。ここでは、誰が「使用者」で誰が「労働者」なのかを説明します。

 

適用事業

 

労働基準法は、事業の種類にかかわらず、労働者を1人でも使用する事業に適用されます。

適用は「企業単位」ではなく、「事業単位」になります。

 

事業単位とは何かというと、場所が離れていたら、別事業ということになります。 本社と支社は、普通は別事業となります。ただし、1人しかいない出張所などは、本社やその所属する支社に含まれるとすることがあります。

 

また、同じ場所にあっても独立性のある異なる事業をしている場合は、それも別事業とされます。工場の診療所や食堂などが例として挙げられます。診療所や食堂は、工場とは別事業ということになります。

 

適用除外

 

労働基準法の適用除外になるのは以下の5つです。

①同居の親族のみを使用する事業
同居の親族以外の者が1人でも働いていれば、適用になります。同居の親族だけ、というのは個人事業に等しいということです。

②家事使用人
いわゆる家政婦さんですが、なぜか労働基準法の対象外になっています。家族の一員とみなされているのでしょう。
ただし、家事代行サービスの会社から派遣されている方は、労働者になります。

一般職の国家公務員(行政執行法人の職員は除く)
国家公務員は国家公務員法が適用されるためです。

④一般職の地方公務員(一部除外)
一般職の地方公務員は労働基準法がおおむね適用されますが、地方公務員法が適用される部分が除外とされます。

⑤船員法に規定する船員(一部適用)
5トン未満の船舶、30トン未満の漁船は船員法の船舶にはなりませんので、労働基準法が適用されます。
船員法に規定する船員は、船員法が適用されますが、一部、労働基準法の適用があります。

 

労働者とは

 

労働者の定義は、職業の種類を問わず「 事業に使用され、賃金を支払われる者」です。

個人事業主で、頑張って毎日働いていても、ここでいう「労働者」ではありません。使用されているわけではないからです。労働基準法は、使用者と労働者の関係がなければ適用されないのです。

また、法人の代表者も労働者ではありません。法人の代表者は、使用者になるためです。

その他、競輪選手も労働者ではないとされた判例があります。競輪選手は個人事業主に相当するとみなされたようです。競馬の騎手や競艇の選手はどうかというと、判例がないためわかりません。プロ野球の選手なども、労働基準法では労働者ではないとされるようです。

 

使用者とは

 

「使用者」に該当するのは、下記の3つです。

①事業主
法人の場合は、経営者ではなく、法人を意味します。

②事業の経営担当者
法人の代表者や取締役のことです。事業経営一般について権限と責任を負う者をいいます。

③事業主のために行為をするすべての者
管理職など、労働者の指揮監督などについて権限を与えられた者をいいます。ただし、 中間管理職は、労働者にも該当します。

 

罰則

 

労働基準法には、上記以外にも罰則の設けられている規定があります。

 

解雇制限、法定労働時間、法定休日、休憩、割増賃金、年次有給休暇などの違反は、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」です。

 

労働条件の明示、賃金支払5原則、労使協定の届出、就業規則の作成・届出、労働者名簿・賃金台帳などの違反は、「30万円以下の罰金」です。

 

 

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