老齢基礎年金とは、国民年金制度で保険料を納めている人が(基本的には全員ですが)、65歳以降にもらえる年金のことです。
2017年8月に年金制度が改正されて、老齢年金に関しては受給しやすくなりました。国民年金は基本的に全国民(国内の外国人も)が強制的に加入しなくてはならないものですので、通常は皆さんもらえるものなのですが、諸事情あってもらえない方もおり、そういう人たちも保険料を払っている期間がありますので、年金をもらって少しでも老後の足しにしてもらおうということですね。
今後、受給開始時期が延長される可能性もありますが、とりあえず今の制度ではいつから、いくらもらえるかを知っておく必要があります。
老齢年金の受給は、老後の生活の非常に大きなウェイトを占めるものです。いつからいくらもらえるかを知らないと、それ以外の貯金はいくら必要か、ということがわからなくなりますので、ご自身の年金額をよく確認しておくことが肝要です。
※このページでは、「老齢基礎年金」について説明しますので、「老齢厚生年金」については、老齢厚生年金はいつから、いくらくらいもらえるのか、を参考にしてください。
受給資格期間
国民年金は第1号、第2号、第3号被保険者に分かれます。また、これ以外にも任意加入被保険者があります。
第1号被保険者は主に自営業・無職の方になりますが、自分で毎月の保険料を支払っている方です。
第2号被保険者は会社員で、毎月厚生年金保険料が会社と折半で引き落とされており、これが国民年金保険料にも使われています。
第3号被保険者は、第2号の配偶者であり扶養されている方で、保険料の支払はありません。
2017年8月の改正により、受給資格期間(受給するのに必要な被保険者期間)が25年から10年に大幅に短縮されました。
被保険者期間=①納付済期間+②免除期間+③合算対象期間≧10年(120月)
①納付済期間とは、実際に保険料を納付した月数で、会社員の場合は20歳から60歳までの間の勤続期間になります。
②免除期間とは、第1号被保険者にしかないもので、
・法定免除 ・・・障害や生活保護など
・申請免除(全額、4分の3、半額、4分の1)・・・所得が少ないとき(世帯主、配偶者含め)
・学生納付特例
・納付猶予・・・所得が少ないとき(配偶者含め)
・産前産後期間
があります。年金額の算定に含まれるものや、含まれないもの、一部含まれるものがあります。
③合算対象期間とは、20歳前や60歳後に会社員として勤めていた期間や任意加入できたけれど加入していなかった期間のことです。
年金額の算定には含まれません。
(※いくつかのパターンがありますが、ここでは省略します)
支給開始年齢
受給資格期間を満たしている方は、65歳です。正確には、65歳の誕生日の前日から受給権が発生します。
その3か月前に年金機構から「年金請求書(裁定請求書)」が送られてきます。これに必要事項を書いて送り返すと、厚生労働大臣が受給権の確認(裁定)を行い、年金の支払いが開始されます。
なお、年金の支払は偶数月で、その前月分までを支払うことになります(2月、3月分を4月に支払う)。
この年金請求をしなかったらどうなるでしょうか。
もちろん、年金は支給されません。
「忘れていたので65歳のときに遡ってもらいたい」というときは、遡りで請求してください。
遡ってもらう意思がない場合は、「繰り下げ」請求をしましょう。70歳までもらう時期を遅くすることができます。
繰り上げ支給と繰り下げ支給
繰り上げ支給と繰り下げ支給に関しては、ほぼ老齢厚生年金も同じです。
繰り上げとは、本来65歳からもらえる年金を5年以内前倒ししてもらうことで、60歳からもらうこともできます(月単位で前倒し可)。老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰り上げ請求が必要です。
繰り下げとは、逆に70歳まで先延ばしができます。老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げ請求が可能です。
(ずっと請求せずに70歳過ぎてから請求した場合は、70歳まで遡って繰り下げしたものとして支給してくれます)
1か月繰り上げごとに0.5%年金額が減り、1か月繰り下げるごとに0.7%年金額が増えます。ということは、最大0.5%×60か月=30%の減額があり、0.7%×60か月=42%の増額が可能ということです。
一度請求すると、変更はききませんので、注意してください。
これを聞くと、「繰り下げして増額してもらったほうがうれしい」と思う人がけっこういると思います。しかし、実際には、繰り上げする人はけっこう多いのですが、繰り下げする人は3%もいないということです。ただ、平均寿命が延びてきたためか、繰り上げ請求も減っているようです。
これは寿命との関係で、長く生きれば繰り下げが得だし、そうでなければ繰り上げが得だということなのです。
60歳まで繰り上げしたときの損益分岐点(得するか損するかの境目)はおおよそ77歳まで生きた場合で、70歳まで繰り下げしたときの損益分岐点はおおよそ82歳となっています。
日本人男性の平均寿命は2017年で81.09歳、女性は87.26歳なので、男性は特に繰り下げする人が少ないようです。
これだけ見ると、繰り下げしたほうがやはり得に見えます。
そこで、繰り下げ支給を75歳まで可能にして、さらに増額もできるようにする、という案が出ているそうです。しかし、繰り下げする人がこれだけ少ないのに、その必要性には疑問が残ります。
繰り上げ繰り下げの注意点
繰り上げ支給をすると、「65歳になった」とみなされますので、65歳未満が要件の障害基礎年金や寡婦年金が支給されなくなります。また、その他障害の改定請求も同様の理由でできなくなります。
付加年金が支給される場合には、付加年金にも繰り上げの減額、繰り下げの増額の効果が及びます。
年金支給額
基本的な年金額は、780,900円×改定率(平成31年度は0.999)×保険料納付済月数/480=40年間納付した人は780,100円(平成31年度)となります。
※改定率は、その年の物価と賃金の上昇率を勘案して毎年度変更されます。
免除期間がある人は、法定免除、全額免除は免除期間の1/2、4分の3免除は5/8、半額免除は3/4、4分の1免除は7/8、産前産後免除は全期間が保険料納付済期間となります。
平成31年度の年金保険料額は17,000円×保険料改定率(0.965)=16,410円です。
上記の式で、779,300円÷480≒1,623円ですので、1か月保険料を払うと年間1,623円もらえる年金が増えるということになります。
ということは、最低でも10年以上は年金をもらわないと損をする、ということになります(物価上昇などを無視して)。
付加年金
厚生年金に加入できない第1号被保険者に認められているもので、毎月納付する保険料に400円を加えることができます。これを行うと、納付した月数×200円が老齢基礎年金の年額に加算して支給されます。この200円には改定率はかけません。
ということは、この分は2年で回収することができますので、普通の年金部分よりも得な制度であると言えます。
もし40年間この付加保険料を払ったとしたら、200円×480か月=96,000円が上乗せされることになります。
ありがたい制度ですね。自営業の方で国民年金基金に加入していない方は、是非、付加保険料を納付してください。
振替加算
最後に振替加算について説明します。
これは主に専業主婦やパートタイマーとして配偶者の扶養に入っていた方に少し加算する、というものです。
昭和41年4月1日までに生まれた方が対象で、老齢基礎年金をもらう際に配偶者が老齢厚生年金(20年以上)か老齢障害年金(1、2級)を受給していると、もらえる場合があります。
加算額は、224,700円×改定率×生年月日に応じた率(1~0.067)で、昭和41年生まれの方で15,000円ほどが年間増額されます。
なお、この振替加算は、離婚したり、配偶者が死亡したりしてもなくなくことはありません。
まとめ
老齢基礎年金の額は、年金支給額 × 繰り上げまたは繰り下げの割合 +付加保険 +振替加算 になります。
会社員だった方は、これにさらに老齢厚生年金がもらえることになります。
※実際にもらえる額は、ねんきん定期便などで確認してください。
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