会社員の方は、給料明細をもらうと、所得税や住民税以外に、「社会保険料」として厚生年金保険料と健康保険料が引かれているのがわかります。総支給額に比べて、手取りがけっこう少なくて、がっかりしてしまうときもありますよね。
保険料の計算
厚生年金保険料も健康保険料も、給料(報酬)とボーナス(賞与)に一定の額を掛けて計算するのですが、「報酬」というのが支給されている給料のままではありません。
報酬には、基本給はもちろん、家族手当、残業手当、通勤手当も含まれます。また、もし年に4回以上ボーナスをもらうことがあれば、それも報酬に入ります。
そして、この報酬を厚生年金保険料額表にあてはめて出したものが「標準報酬月額」になります。標準報酬月額は、175,000~184,999円は180,000円とみなすというように、ある範囲の額はまとめてしまいます。
これに健康保険(石川)の場合は40歳未満は9.99%、40歳以上で11.72%(介護保険料込み)、を掛け厚生年金保険の場合は18.3%を掛けて保険料を算出しています。
賞与については、実際にもらった賞与(年3回まで)の1,000円未満を切り捨てたものが「標準賞与額」となりますが、健康保険の場合は、年間573万円が上限、厚生年金保険の場合は1回150万円が上限になります(年間450万円が上限)。
そして、やはりこれに18.3%を掛けたものが保険料になります。
等級による微妙な差
報酬月額に関して、等級分けされているというがどういうことになるか考えてみましょう。
給料が184,000円の場合と、185,000の場合(40歳未満)では、社会保険料は以下のようになります。
実際の給料 | 184,000円 | 185,000円 |
標準報酬月額 | 180,000円 | 190,000円 |
健康保険料(全額) | 17,982円 | 18,981円 |
健康保険料(本人額) | 8,991円 | 9,490円 |
厚生年金保険料(全額) | 32,940円 | 34,770円 |
厚生年金保険料(本人額) | 16,470円 | 17,385円 |
給料-社会保険料 | 158,539円 | 158,125円 |
そうなんです。給料が1,000円多いほうが、手取りが414円少なくなるのです。
ということは、社会保険料の支払いが、会社と本人分でそれぞれ1,414円高くなっている、ということになります。
本人にとってはどちらが得か?
この社会保険料ですが、健康保険料については、いくら払っても診療に関する自己負担分が3割であることは変わりありませんので、保険料は少ないほうがいいと言えます。
ただし、病気やけがで仕事を休まなくてはならなくなった際にもらえる「傷病手当金」は標準報酬月額を基礎にしますので、多いほうがよかった、ということもありえます。
同じ原因でもらえる期間は1年6か月ですが、上記の場合では、月に190,000-180,000円=10,000円×2/3≒6,670円ほどの差となり、最大で6,670円×18か月=120,060円もらえる額が変わってきます。
厚生年金保険料については、払った額に応じて将来もらえる年金額が変わってきます。当然、多く払えば、多く返ってくることになるのです。
10,000円の標準報酬月額の差は、10,000円×5.481/1,000=約55円の年金額を増加させます。昇給までの間の1年間(12か月間)、185,000円をもらった場合には、184,000円をもらった場合よりも、年間660円分、老齢厚生年金が多くもらえるのです。年金受給を15年間とした場合には、合計で9,900円です。
この額は、手取りが減る分414円×12か月=4,968円より多くなるので、185,000円もらうほうが将来的にはいいかもしれません。
会社はどのように給料を決めるべきか?
会社としては、1円給料を下げるだけで支払う社会保険料が月1,414円減りますので、ぎりぎり届かない額にしておくほうが有利ではあります。
ただし、上記のように、本人にとって不利益が出る場合がありますので、社員の将来のことも考慮しつつ、給料を設定すべきでしょう(傷病手当金は可能性が低いとはいえ、支給額に大きな差が出ます)。
賞与額について上限があることに注目して、基本給を極限まで低くして、賞与を大きくすることで社会保険料を減らそうと考える方もいるかもしれませんが、それはやめたほうがいいですね。
社員のためにはなりませんし、そういう会社は長続きしないだろうと思います。