社会保険労務士
社会保険労務士とは
社会保険労務士とは、人事・労務管理を主として中小企業をサポートし、年金相談にも応じることができる資格です。
労働保険・社会保険などの複雑な手続を企業に代わって行い、「ヒト」に関する専門家として労務管理の相談指導業務を行います。また、年金相談業務や、裁判の場での補佐人としての役割を担うこともあります。
「特定社会保険労務士」は紛争解決手続代理業務を行うことができるとされ、労使いずれかの代理人として交渉を行うことができます。特定社会保険労務士とは、社会保険労務士の中で特別研修と試験に合格した者が得られる資格で、現在、社労士の40%近くが持っています(合格率54~76%)。
社会保険労務士は、「社労士」「労務士」と省略されて呼ばれることがあります。社会保険労務士の中では「社労士」と呼ぶのが一般的ですが、それ以外では「労務士」と呼ばれることも意外と多いです。
社会保険労務士は、国家資格で 社労士しかできない独占業務もあります。紛らわしいですが、「労務管理士」という民間の資格がありますが、これとはまったく別物ですのでご注意ください。
社会保険労務士法
社会保険労務士は国家資格ですから、それを規定する法律があります。それが社会保険労務士法です。
第1条 この法律は、社会保険労務士の制度を定めて、その業務の適正を図り、もつて労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的とする。
第1条の2 社会保険労務士は、 常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、 公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない。
ちなみに昭和43年(1968年)6月に制定されているので、2018年が社労士制度設立50周年とされていました。
社労士法では、1号~3号業務というものが定められています。第1号業務は社労士法の第2条第1号に定められているものという意味です。
1号業務としては、6種類の業務があります。
①行政機関への申請書の作成
②申請書の提出代行
③申請について主張や陳述を代理すること(事務代理と呼ばれます)
④⑤⑥紛争調整委員会、県労働委員会などでの斡旋・調停で当事者を代理すること(特定社労士のみ)
※当事者の代理とは、相談・和解交渉・和解契約締結を言いますので、特定社労士でなければ相談を受けることもできません。
2号業務は、「帳簿書類の作成」です。
3号業務は、「労務管理や労働社会保険についての相談・指導」となっています。
なお、 1号業務と2号業務については、独占業務となっているので、 社会労務士以外の者が業として行うことはできません。
また、これ以外に、平成27年度より補佐人制度というものが追加されました(法第2条の2)。これは、民事裁判に弁護士とともに出頭し、陳述をすることができるというものです(代理人になる)。
業務の詳細
普段、私たち社会保険労務士が中小企業の顧問として行う業務は、以下のようなものです。
まずは、1号業務。
- 労働保険(労災保険と雇用保険)の適用、新規取得、退職による喪失、育児や介護休業給付、年度更新など。
- 社会保険(健康保険と厚生年金保険)の適用、新規取得、退職による喪失、賞与支払届、産休や育休時の納付免除、算定基礎届など。
- 就業規則、賃金規程
- 厚生労働省所管の助成金の申請
次に、2号業務です。
- 労働者名簿、賃金台帳
- 労使協定
- 就業規則等も2号業務とされる場合もありますが、いずれも独占業務なので社労士のみが代行できます。
3号業務です。
- 労務管理、人材確保などに関する相談、指導
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社会保険労務士への依頼
必ず社会保険労務士に依頼しなくてはいけない?
もちろん、そんなことはありません。
労働保険や社会保険の手続は、自社で行うことができます。ただし、それを会社に代わって(報酬をもらって)することは、社会保険労務士でなくてはできないということです。
就業規則の作成も、社会保険労務士しか代行できません。資格のない者が報酬をもらって行うことは原則できませんので、ご注意ください。
また、厚生労働省関係の 助成金の申請も、社会保険労務士に限って代行手続が可能なものとなっております。
社会保険労務士に依頼した場合
上に書いたように、社会保険労務士にあえて依頼しなくても、自社で行う人員と時間があれば、社内で完結することは可能です。
しかし、労働社会保険の手続きや就業規則の作成など、頻繁にする必要のない作業に専門の従業員を置くことは、人材資源を分散させてしまうため、企業戦略としては望ましくありません。
社会保険労務士はそれを本業としていますので、素早く的確に行うことができますが、社内で行うと、年に幾度もない作業のたびに、様式を探したり変更がないかを調べたりして本業に集中できず、かえって損をすることがあります。何度もある簡易な手続であれば、社内で行えばいいのですが、そうでなければ、社労士に依頼するほうが楽だと思います。
要はコストパフォーマンスということになりますので、その業務にどれだけ時間がかかるか、その時間を本業に充てた場合にどれだけのお金を稼ぐことができるかを把握することが重要です。
器用貧乏という言葉があります。なんでもできるからつい、自分ですべてやってしまう。しかし、その仕事、自分でやらなくてはならない仕事でしょうか?
総務担当の方がお手すきであれば、自社でするのがいいですが、社長自らこのような作業をしているのであれば、非常に無駄である場合が多いです。
顧問契約などを上手に利用して、なるべく少ない経費で手続きを済ませて、さらに専門家の各種助言をもらうことをお勧めします。
税理士に依頼しているから必要ない?
小さい会社でよくあるパターンが、「税理士にまとめて依頼しているから、社会保険労務士と契約する必要がない」というものです。
社会保険・労働保険の手続で必要なものが発生した場合に、税理士に依頼すれば、提携している社労士がやってくれる(もしくは、 違法ですが、税理士自ら事業主のフリをして申請する)場合があります。
こういう場合、大きな税理士事務所や会計士事務所で、事務所内に社会保険労務士がいる場合であればまったく問題ありませんが、ただ提携しているだけの場合は、会社側から依頼したことしかしてくれませんので注意が必要です。
・就業規則の作成
・36協定の届出その他労務管理に必要な事項
・働き方改革の説明と今後の対応策
・適切な助成金の申請
など、税理士では説明してくれませんので、長く経営されていても「36協定って何?」という社長さんもいらっしゃいます。
税理士だけに依頼しておけば、安い金額でサービスを受けることはできるのですが、そのサービスはやはり 安いなりのものであると言わざるを得ません。
社会保険労務士は、労働保険と社会保険の手続だけをする存在ではありません。
労務管理によって会社を強くし、業績の向上に資する役目を担っています。
少しお金がかかっても、優秀で熱心な社会保険労務士と契約することで、会社の未来も変わってくるというふうに考えていただけるといいと思います。